ユーリが怪我をしました (3)

「聖なる活力よ、来い。ファーストエイド」
フレンが詠唱を唱えれば手のひらに光が集まり、そしてユーリの足を癒していく。
魔導器が無くなったと同時に魔法もこの世界から一時消えてしまっていたのだが、リタをはじめとするアスピオの研究員のおかげで代替となるマナの研究も進み、こうして徐々に魔法も使えるようになってきていた。
ユーリは心の中でリタに感謝しつつ、怪我をしたのがこの時期でよかったと、そっと安堵の息をもらした。
足の怪我も快方に向かっていて、痛みもだいぶ引いてきていた。
「いつもすまねぇな、フレン」
「それは言わない約束だよ。ユーリ」
なんてお約束の台詞を交わしながら、フレンはユーリの足に当て木を添えた。
もうすっかり慣れた手付きで包帯を巻いていく手を、自然とユーリの目が追っていく。
すると、何か思い出したのか、フレンが途中で手を止めて顔を上げた。
「そうだ」
「あ?」
「ねぇ。そろそろお風呂に入っても大丈夫だと思うんだけど、どうかな」
「フロ?」
確かに怪我をしてから数日。フレンに身体を拭いてもらっていはいたが、風呂には入っていないユーリだ。
そろそろ入りたいなと思ってはいたが、不自由な足ではひとりで入ることも叶わないわけで。
そうなると必然的に......。
「ユーリ?」
「お、おう。そうだな......」
こちらを見上げてくる空色の瞳を直視できずに、曖昧な返事をしながらユーリは視線を逸らした。

ユーリが躊躇うのには訳があった。
怪我をしてからというもの、フレンは本当に付きっきりなのだ。
しかもフレンは、今の今までユーリに手を出してきたりはしなかった。
いや、本当はフレンだって相当我慢しているはずだ。
ユーリが居るのはフレンの部屋のフレンのベッドの上。恋人が毎日そこへ寝ているのに、何も感じない訳がないのだ。
実際、フレンからちらちらと、そういった熱のこもった視線が何度が向けられていたのを自覚している。
でも結局は、足への負担を案じてくれているわけで。
「どうかした?」
黙ってしまったユーリに、フレンが首をかしげる。
だが、風呂となると状況はますます酷なものとなる。
決して、フレンとコトを致すのが嫌な訳ではないのだ。
ただこれ以上、フレンに我慢をさせるのは如何なものかと思っているだけなのだ。
ユーリは顔に熱が集まるのを感じたが、それをフレンに見られたくなくて、早口でこう答えた。
「なんでもねぇ。とっとと風呂に連れてけっ」
ぐるぐると回る思考に頭痛を感じている間に、ユーリはふわりと身体を抱きあげられていた。



「ユーリ。流すよ?」
「おぅ」
合図とともに呼吸を止めると、頭の上からシャワーの湯が落ちてきた。
ユーリは服を全部脱がされてから風呂場に置いてある椅子に降ろされ、フレンの為すがままになっている。
何度が湯を掛けられ、泡がひととおり流れ落ちたことを確認してから、手で顔の水滴を拭いながら顔を上げた。
目の前には、袖とズボンの裾を捲くっただけの、服を着たフレンの姿。
その彼は、今度はボディーソープを手にとり、てのひらで泡だてはじめていた。
服を着てるってことは、その気は全くないってコトだよな。
ユーリはそっとちいさく、ため息をついた。

(って、ちょっと待て!何でオレため息ついてんだ...っ!)

これじゃまるで、自分が期待していたみたいじゃないか!

そんなユーリの動揺は露知らず、フレンは後ろからそっと泡を肌に滑らせてきた。
首から背中、そして腕へと一カ所ずつ丁寧に洗っていく。何が楽しいのか知らないが、その行為には鼻歌が混じっている。
それとは相反して、ユーリは心臓バクバクだった。
フレンに『その気』はないのに自分だけ期待していたなんて思われたら、とてつもなく恥ずかしい。
心臓のウルサイ音がフレンに聞こえないことを祈りつつ、平静を保とうとゆっくりと息を吐き出した。
なのに。
「......っ!」
途端、ユーリの身体が小さく跳ねた。
フレンの手のひらが、わき腹をなぞったから。
フレンに散々教えられた『弱いところ』。自分でも解っている。
「ユーリ、どうかした?」
白々しく聞いてくるところがムカツク。
「〜〜っ。なんでもねぇよ」
もう、こうなったら意地だった。絶対にこの場は耐えてみせる。
そう決意した側から、フレンの手はユーリの感じるところを何度も何カ所も触れていく。
コイツ、解っててやってるな。
「おまっ、くすぐったいんだよ。フツーに洗え、フツーに」
「普通に洗ってるだけじゃないか。ユーリの身体が感じやすいだけなんだよ」
「誰のせいだと思って......っあ!」
乳首を弾かれて、思わず声が漏れた。
今度は確かに意図を持って刺激を与えられている。ユーリは肩越しにフレンに非難の色を含めた視線をやった。
「...っ、フレン、てめ......」
「もう。ユーリが変な声出すから、イタズラしたくなっちゃうじゃないか」
「オレのせいかよ...んっ......」
だったら声を漏らすまいと口唇を噛むが、久しぶりの感覚に思考回路もボヤけてきそうだ。
気持ちよくて、たまらない。
「ゴメンね。今日は何もしないつもりだったんだけど、もう、止められそうにない」
「あっ!」
耳たぶを食まれて低く囁かれてしまえば、なけなしの理性はあっという間に崩れ去ってしまいそうになる。
ぴちゃぴちゃとわざと音を立てて耳を舐められると、ぞくぞくとしたものが背中を駆け抜けた。
「はっ...、やめ......」
「ねぇユーリ。溜まってた?」
「何言っ.....んんっ」
フレンが喋るたびに、熱い息が耳にかかる。
悪戯な手は先ほどから胸を弄り続けていて、石鹸のぬめりを借りていつも以上に感じてしまう。
その手から、舌から逃れたくて身体を前に屈めたのに、それを許さないというように、無理矢理身体を起こされた。
「ああっ」
まるで羽交い絞めのように後ろから抱き締められた。
顔の真横にあるフレンの頭は、確実にソコを、見ている。
「いやらしいね、ユーリは。もう勃たせてるの?」
「くっ....」
「まだ触れてもいないのに、こんなにおっきくして」
「うぅ......」
「本当はしたかったんでしょ?ユーリも」
「ち...が......」
「ほら見て。先っぽから何か出てきたよ。もしかして、言葉だけで感じてる?」
「んん......っ」
必死で顔を逸らしても、フレンの視線を痛いほど感じていた。
触れられていないのに、ソコに絡みついてくる熱い視線。
「ユーリ、腰が揺れてるよ」
「...っ、言うな....っ」
「このまま、見てるだけでもイけそうだよね」
「なっ...!」
冗談じゃない。こんな状況がまだ続くなんて。
早くなんとかして欲しくて必死に身をよじるが、所詮この男に力でかなうはずもなくて。
「言ってユーリ。どうされたい?」
「.......触ってくれよ」
「どこを?」
「――っ!」
一気に顔に熱が集中した。
この状態でなら言わなくても解ってるハズなのに、今日はとことん意地が悪い。
だけどもう、限界だ。
「オレの...****をっ、お前の手で、イかせてくれよっ!」
「よくできました」
「あああぁっ!」
待ち焦がれた感覚は期待以上に快くて、触れられた瞬間大きく身体が弓なりに反った。
「あっ、ん......」
甘い声がやたら風呂場に響く。自分の声なのに煽られて、もう止められそうにない。
「んあっ!...フレン.......」
熱い手のひらが、優しく熱心に確実に刺激を与えてくる。
どこをどういじれば感じるのか、すっかり相手にばれてしまっていて。
「んぅ、あっ!...んんっ」
ユーリにできるのはフレンの袖にしがみつき、快楽の波に乗ることだけ。
「ユーリ、本当はしたいの我慢してた?」
「なっ...、あぁっ.......」
「こうやって僕の手で先っぽを弄られて」
「んんん....っ」
「次に、袋を揉まれて」
「うはぁっ、やめ...っ」
「裏筋をなでられて」
「うあっ!」
「くちゃくちゃになるまで扱かれて」
「ひっ、やっ....ああっ!」
急に激しくなった刺激に、ギリギリの縁まで追い立てられる。
もう訳が解らなくて、フレンの言葉もまともに聞いていられなかったのに。
「やっ、あ、ふれ....っ、もぅ.....」
「僕はずっと、ユーリにこうしたいと思っていたよ」
「あああぁぁっ!!」
最後に響いた甘い囁きに、ユーリはあっけなく堕ちた。


(4*)へつづく(R指定ご注意!)






(2010.05.14)



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