やわらかい夜 (1)

灯りを落とした部屋で
ふたりベッドに腰掛け
お互いの温もりを確かめ合う。

感動の再会(?)を果たしたあと
散々、部屋の掃除に振り回されたあげく
その後は、下町の連中総出で宴会が始まり
解放されたのはついさっき。

ようやく、ふたりきりになれた時
彼の温かい眼差しが舞い降りてきた。
言葉もなく、自然とふたり引かれ合って
指をからめ、口づけを交わした。
久々に感じたそのやわらかさに少し驚いて
思わず身体を引こうとしてしまったけれど
腰に回された手で引き寄せられ
もう逃げることもできず。

薄く瞳を開くと、すぐそこに彼の顔。
右頬が、少し赤く腫れている。
さっき、思いっきり殴ってやったから(掃除の件で)。
いつもなら笑ってやるところなのに
今日は何故だか、そんな余裕もなく。

静かな部屋に、口づけを交わす水音だけが響いている。
そんなに大きな音じゃないはずなのに、やけに大きく聞こえる。
自分の心臓の音も。
一度気になり始めると、どうしても気になって
なんだか落ち着かなくなってきて。

「...なぁ、オイ、フレン....」

ちょっと落ち着きたくて、名前を呼んでみたものの
返ってくる言葉もなく、息をつく暇もなく、口唇をふさがれる。
「ふ.....ぅん.......」
熱い舌が侵入してきて、自分の舌をからめとられ
歯裏をなぞられると、ぞくぞくとしたものが背中を駆けあがってくる。
もちろん、不快感などではなく。

とさり、という音とともにベッドに押し倒され、
ひとつずつ服を乱されていく。
ふと、身体に感じていた重みが軽くなり、
不思議に思って閉じていた瞳を開けると
自分の服の裾に手をかけ、まくりあげているフレンの姿。
腹筋が、胸が、徐々に視界に飛び込んでくる。
(うわ.....!)
以前よりも少したくましくなったように思える彼の素肌が
ゆっくりとのしかかってきた。


熱い身体。


彼の匂い。


耳元に感じる息づかい.。


「ちょっ、ちょっと待ったぁー!!」
「ユーリ!?」
思わず上げてしまった声に、フレンの動きが止まる。
自分でも訳が分からなくなって、ただひたすら顔が熱くて
そばにあった枕で顔を覆う。
とにかく、ただただ恥ずかしかった。
こういう行為が、初めてというわけでもないのに。
たった1年、そんなに長いと感じたわけでもなかったのに。
久々に触れ合う体温で、心臓が爆発しそうなくらいにうるさくて。
まともに、フレンの顔が見れない....。

「....ごめん、ユーリ」
ほんの少しの戸惑いのあと
枕の上から、かすれた声が落ちてきた。
少し枕をずらすと、申し訳なさそうな顔。
「久々だったから、その...余裕がなくて.....」
もう一度、ごめんねとちいさく呟いて、そしてちいさく笑った。
前髪をゆっくりと梳く優しい手に、少し安心する。
「オレも....。おかしいな、初めてってわけじゃねぇのに」
ふたり同じように感じていたのだと思うと、なんだか笑えてきた。

おでこに触れるだけのキスをされて。
まぶたに。
頬に。
そしてまた、口唇に戻ってきて。
彼の首へ腕を伸ばして。
ふたりを隔てる邪魔な存在となった枕を、横へ退けて。
しっとりと、お互いの身体を抱きしめ合えば
熱いため息が漏れる。

やっと、戻ってきたみたいで安心する。
この、温かい腕の中に。


(2
*)へ続く




映画後の再会編、ようやく救済できそうです。
初めっからこーゆーのが書きたかったのに
何だったんだ、前のテンション...。
でもおかげで、当初の構想よりかーなーりー糖分多めですvv

妄想の中で、急にユーリが素直になったんだ...(遠い目)



(2009.11.11)



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