やわらかい夜 (2)

胸元に降りてくる温もりを、瞳を閉じて受け入れる。
「...っ、....は.....」
その指の触れたところが、やけに熱く感じる。
まるで、触れられることを身体が悦んでいるような。
熱く口唇を押しあてられれば、全身に甘い痺れが駆け抜けて
思わず身体が弓なりにしなる。
「今日のユーリ、すごく、感じてる....」
「....そ...ゆこと....、ゆーなよ......」
耳元の熱い囁きですら、敏感に反応してしまう。
いちいち言われなくても、自分が一番よく分かっているのに...。
「ふぅっ、あぁ.....!」
熱さに耐えれなくなって、思わず声が漏れる。
自分でもドキリとするような、甘ったるい声。
フレンの指が、口唇が、するすると身体の上の滑っていって
その熱に、もうどうにかなってしまいそうで。
「はぁっ....、っ...フレン......」
「ユーリ....」
たまらずにその名を呼ぶと、熱い口づけとなって返ってくる。
深く、まさぐるように口の中を侵されれば、身体の奥がじんと痺れる。
「ふぁ.....んんっ....」
とろけるような感覚に身を委ねていると、その指が、熱を帯び始めていたそこに絡みついてきた。
突然の快楽に、思わず身体がこわばる。
「んあぁっ!んんーっ」
たまらずに上げた声も、彼の口の中へとかき消されていく。
息苦しくて、性急に高められる快楽をどうにかしたくて、首を横に振るのに
その指にどんどん追い詰められていく。
「ああっ、やっ、あぁっ......!」
どうにか息苦しさからは逃れられたものの、
せり上がってくるその波に、飲み込まれてしまいそうになる。
「あっ、あっ....!フレン、....やっ....」
それに耐えるように必死にシーツを掴んでいると
その拳を包み込むように、あたたかい手が重なってきた。
「ユーリ、大丈夫だから....」
そして、シーツから指をほどくと、そこへ指を絡められて。
「大丈夫だから、全部、僕に...委ねて......」
甘く、熱いその囁きに、一気に視界が白に染まった。
「ああ...っ...、あああぁぁぁーっ!!」

そして襲ってくる、解放感のあとの脱力感。
それに身を任せていると、意識の向こうでフレンが自分の足を開こうとしているのがわかった。
この後、彼が何をしようとしているのかも。
恥ずかしいという気持ちはあったけど、抵抗する気はもう無くて。
「ん....っ」
その場所に指が触れて、ちいさく声がもれる。
ぬるりとした感覚は、おそらく先ほど自分が放ったものだろう。
「ユーリ。痛い?」
「...っ、や......へーき.....」
ゆるゆると、入り口をほぐすようにうごめく指。
痛みはなかったが、何とも言えない感覚が襲ってくる。
思わず締め付けてしまいそうになって、大きく深呼吸すると、額にキスが落ちてきた。
「ユーリ....」
本当は性急にコトを進めたいだろうに、
傷つけることがないようにと、ゆっくりと丁寧にそこをほぐしていく。
その気づかいに愛おしさが込み上げてきて、彼の背中に腕をまわした。
背中から首のうしろへ手を滑らせて、ふわふわの髪の毛に触る。
金の髪を梳いてやると、甘えるように首筋に顔を埋めてきて。
なんとなく、可愛いと思えてしまう。
そうしているうちに、指が1本から2本へと増やされ、何とも言えない異物感に顔をしかめた。
それでも、迷いもなく奥へ奥へと侵入してくるそれがある一点に触れたとき、
強烈な快感が脳天を駆け抜ける。
「ああぁっ!!」
たまらずに声をあげると、満足したかのように微笑んで、顔を覗きこんできた。
「ここだよね。ユーリの、いいところ」
「やっ...やめっ!あっ、ああっ!!」
久々とはいえ、十分相手に知りつくされた身体。
的確に何度もそこを責められれば、ひとたまりもない。
「ひゃぅっ!....んあっ、や...そこっ...!」
跳ねまわる身体を、自分ではどうしようもなくて
何かに持っていかれそうな感覚に耐えるように、彼の腕を必死に掴んだ。
ふいに指を抜かれて、それまで暴れまわっていたものがいなくなり、安堵感と虚無感に身体がベッドに沈む。
だけど、それを許してくれるはずもなく、すぐさまあてがわれた熱にドキリと心臓が鳴った。
「あ....」
熱い....、と思った瞬間、ものすごい質量を持つそれが身体を貫いた。
「はっ!ああああぁぁーっ!!」
「......っく、ユーリ.....っ」
痛みがないかわりに襲ってきたのは、すさまじい快楽の波。
「あっ.....あぁ........」
衝撃の余韻に、身体がちいさく震える。
挿入ってきたフレンは、中でドクドクと脈打っていたが、
すぐに動こうとはせず、波をやり過ごすのをじっと待ってくれている。
ちいさく息を吐くと、汗で貼りついた前髪に触れながら、顔を覗きこんできた。
「ユーリ....、だいじょうぶ?」
「......ん」
降り注がれるやさしいキスを受け入れると、ゆっくりと律動を開始した。
まるで内臓ごとかき回されているような感覚。
だけど、奥を突き上げられれば、すぐにそれも快楽へと変わっていく。
「あっ、あぁ....っ、あん」
「すごい、ユーリの中....気持ちいい....」
甘くうっとりと囁かれるだけで、身体中が悦びに震える。
すっぽりと身体を包み込む彼の腕が、熱い。
閉じた瞳からこぼれた涙をすくう口唇も、とても熱くて。
初めはおだやかだった彼の動きも、次第に余裕がなくなってきて、
お互い熱に浮かされるように、どんどん高みへと追い込まれていく。
「あっ、あ....ふれんっ!....もぅっ....!」
「いっしょにイこう。ユーリ...っ」
「はぁっ!やっ、ふれんっ、はあああぁぁー!!」
白くかすむ意識の向こうの奥で、彼の熱をまた感じて
ゆるゆると深く沈む身体を、彼の腕に委ねていった。


かすかに気配を感じて、薄く瞳をあけた。
窓の外は薄く白みがかっていて、夜明けが近いことを物語っていた。
視線をさまよわせると、こちらに背中を向けて立っているフレンがいた。
上半身裸のその姿は、やはり以前と比べてひとまわり鍛え上げられていた。
隆々とした、肩から二の腕にかけての筋肉。
引き締まった背筋。
床に散らばった服を身にまとっていく様に、思わず見とれてしまい
また身体に火が灯りそうな気がして、軽く身じろいだ。
その気配を感じたのか、彼がこちらを振り向いた。
「ごめん。起こしたかい?」
その顔に苦笑を浮かべると、上着に袖を通しながら、こちらへ近づいてきて。
ベッドの端に腰かけて、やさしく啄ばむようなキス。
ぴちゃっとちいさく水音をあげたところで、そっと口唇が離れていった。
「......ごめん。そろそろ、戻らないと」
「ん、そっか」
この場を離れるのを惜しむように、何度も髪を梳いてくれる。
朝が来れば、また一日が始まる。
そこには、それぞれに日常が待っている。
でも、寂しいと思う気持ちは全くなかった。
またすぐに逢えることを、知っているから。
「じゃあ、またね」
最後に軽く、約束のキス。
意を決したように、軽く口を引き締めて立ちあがり、扉へと歩みを進めた。

それでもやっぱり、その温かい手が離れていく瞬間は、なんとなく寂しいような気がして。


やがて、扉の閉まる音が部屋に響いた。



今回の裏テーマ。
 (1)ユーリさんをかわいく。
 (2)フレンさんをまともに。(え)

ありえんぐらい糖分を詰め込んじゃったけど、よかったのかな?(笑)

意外とエロが難産だった。


(2009.11.22)←良い夫婦の日。



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