「今帰ったよ、ユーリ......あれ?」 部屋に戻ると、居るハズのユーリが居なかった。 「ユーリ?」 部屋の明かりはついたままになっている。 騎士団に入団して数ヶ月。 僕とユーリは、この部屋で生活を共にすることとなった。 数年ぶりにここで再会した僕とユーリは 初めのころは、いろいろと衝突することもしばしばだったが 最近ではお互いの距離感もつかめたようで まあ、うまくやっているほうだと思う。 ただ、この今の距離感を これから先も保っていければの話だが......。 「遅かったじゃねーか」 「なんだ、ユーリ。やっぱり居たのか。居たなら返事くらい..............」 声のする方を振り向いて、言葉を失った。 部屋の奥から顔を覗かせた彼は シャワーから出てきたところ しかも、タオルを腰に巻いただけの姿で。 水のしたたる黒い髪。 透きとおるような肌。 「ごっ、ごめん!!!」 慌てて顔をそむけようと、彼に背を向ける。 そして、背を向けてから気がついた。 「はぁ?何謝ってんだ? 別に女の風呂覗いたわけじゃあるまいし」 「ああ、そうだね。ははは......」 そうだ。これでは、逆に不自然ではないか。 と、頭ではわかっていても、なかなかユーリを振り向けない。 きっと、今の自分はだらしない顔をしていることだろう。 この距離感を保つためには、この気持ちは 悟られてはいけない。 このまま、胸に秘めて このまま――――。 「なあフレン。こっち向けよ」 「や、あの.....ユーリこそ、早く服を着ないと風邪をひくよ?」 「んなの、真冬じゃあるまいし、大丈夫だって。 って、いいから、こっち向けって!」 「ちょっ、ユーリ...!!」 肩をつかまれ、半ば強引に振り向かされる。 どんな罵倒が浴びせられるのか。 それとも、軽蔑の眼差しで射抜かれるのか。 腹の奥でちいさく覚悟を決めた。 「え........?」 一瞬、思考が固まる。 視界に入ってきたのは、ユーリの髪の黒。 気付けば、ユーリは懐に飛び込んできていて 僕の肩に額を当てていた。 抱きつかれているわけではなかったが ありえない至近距離に、どうすることもできず ただ、固まるしかなかった。 「ゆ....ユーリ!?」 シャンプーの良い香りが、鼻をくすぐる。 服の上から、彼の素肌が密着する。 鼓動がやけに大きく響く。 いったい何が起きたのか。 これから何が起こるのか。 ただでさえ、理性をこらえるのが限界なのに......!! 「.....別に、良いんじゃねの?」 耳のそばで、こもった声が聞こた。 「....え?」 言葉の意味が、よく分からなかった。 真意を量ろうとも、彼の顔を見ることはできず。 ユーリはそのまま、言葉を続ける。 「俺が良くて......お前が良いなら、 それならそれで、良いんじゃないのか......?」 ユーリが、ゆっくりと顔をあげる。 頬が、朱に染まっているように見える。 風呂上がりで、火照っているから? それとも.............. 「ユーリ......」 ただ、その瞳の黒に吸い込まれるように 僕は、彼の口唇に顔を近づけた。 (2*)に続く.....(←R指定。ご注意を!!) |
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