冬の散歩道。

映画のあと、軽く買い物をして、そして約束していたパフェの店を訪れて。
なんだかデートコースを満喫したなと笑いながら、ふたりは帰路についていた。

冬の夜は日暮れが早い。
それでもクリスマスの街はイルミネーションに彩られ、華やかな雰囲気を醸し出していた。
並木道は白とブルーのライトで飾られて、とても綺麗だ。

「もう今年も終わりだな」
ふいに、ユーリが呟いた。
「うん、そうだね」
クリスマスが終われば、正月なんてあっという間だ。
冬休みは長いようでいて、実はとても短く感じる。
ふと、終業式の日に渡された宿題が頭をよぎり、ユーリはとても嫌な顔をした。
「1年なんて、あっという間だね」
「今年、何かしたっけなぁ」
「なんだか年々、1年が早くなっているような気がするよ」
「年寄りくせぇこと言ってんな」

そうして、また来年もあっという間に過ぎていってしまうのだろう。
年が明けて3か月もすれば、自分たちは3年生になる。

「そうだ。ねぇ、ユーリはどうするの?」
「なにが?」
「進路。昨日、紙もらっただろ?」


高校生になって初めてもらった、『進路調査票』。
提出期限は、3学期の初日。
つまり、冬休み中にじっくり考えてこいということで。
まだ2年生なのに、もう考えなければならない時期にきたことを思い知らされた。


「さ〜あ、どうすっかねぇ」
神妙な顔つきのフレンとは正反対に、ユーリは軽く言い放った。
「んな事言われてもなぁ。自分が何したいのかも、全くわかんねぇのに」
「うん」
「フレンは、エスカレーター乗るんだろ?」
「うん。...法学部、行こうと思ってる」
「法学...、そりゃまた、お受験コースを」
ザーフィアス学園には、大学部も設置されている。
基本的にエスカレーター式のため、在学生は有利に入学することができるが
高校入学の時とは違い外部受験生も多いため、難易度の高い学部は、それなりに勉強が必要だ。
「やっぱ、親父さんの影響?お前も政治家目指すのか?」
「いや、ちゃんと決めたわけじゃないけど、弁護士になろうと思ってる」
「...そっか」
自分でもぼんやりとしか考えていなかったのに、何故かすらすらと言葉が出る。
遠い先のように思っていた事が、急に現実味を帯びてきた感じがした。
「ユーリは、どうするの?」
「ん?まだ分かんねぇや」
手のひらをひらひらと振りながら、彼は前を歩きだした。


僕たちは、これからどうなって行くんだろう。
ユーリは、これからどうするんだろう。
3年生になって、卒業して、僕は大学に行って、ユーリは...。
ユーリは勉強が嫌いだから、このまま就職するのかもしれないな。
そうなったら、僕たちはどうなるんだろう。


このまま....。



「え...?」
ユーリが驚いて振り向いた。
そしてフレンも、驚いた顔をしていた。
気付いたときには、フレンはユーリの腕を掴んでいたから。

ふいに、心配になってしまった。
このまま、ユーリが消えてしまうんじゃないかと思って...。

「どした?」
首をかしげて、ユーリがふわりと微笑んだ。
「いや...、ごめん。何でもない」
フレンも、何故こんな行動をとったのか自分でもわからずに、その腕を離した。
ぎこちなく視線を彷徨わせるフレンに苦笑して、ユーリはフレンに一歩近づいた。
そして彼の頭を、ぽんぽんと撫でる。
「ユーリ」
「そんな情けない顔すんな。オレ、ちゃんとココにいるだろ」
「ユーリ...?」
「なっ」
そして笑ってウインクした。
その仕草に安心したのか、フレンの表情にも笑顔が戻る。

「やっぱり敵わないな、君には」
この親友には、いつだって自分の浅はかな考えなんてお見通しなのだ。
そしていとも簡単に、悩みを吹き飛ばしてしまう。


たとえ進む道が違えども、この関係が終わると決まったわけじゃない。
いや、むしろ永遠に続けていけるような気がする。


「ユーリ、来年もよろしくね」
「なんだ?もう新年のあいさつか?」
ちょっと気が早くないかと笑いながら、ふたり肩を並べて歩き出した。




学パロのくせに、めっちゃ現実味ある話(苦笑)
まだ『親友どおし』のくせに、フレンさんがぐらぐらですねv


(2010.01.02)



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