みずいろのまち(2)

半ば強引にベッドへ座らされて、下肢を纏う服だけを脱がされて。
僕の足の間で、ユーリの頭が揺らめいている。
「......っは、ユーリ...」
「ふ...、んぅ......」
ユーリの与えてくれる刺激は的確で、むしろユーリにしてもらえているという事が何よりの興奮材で、本当に5分でいかされてしまうのではないかと思ってしまう。
てらてらと光る薄い唇から僕のモノが出し入れされる光景は、なんともイヤラシイ。
ユーリは本気で5分でいかせるつもりなのだろう。ひどく積極的だ。
すらりとした長い指が絡んできて、口をすぼめて竿をしごいて、裏筋を舐めあげて。
「......どだ?気持ちい?」
ちらりとこちらを見上げる欲を含んだ視線も、僕を煽るには十分すぎて。
「......っく、あぁ、すごく」
「ん......」
正直に答えるとユーリはうれしそうに瞳を細めて、また行為に没頭していく。
こんな状況が5分で終わってしまうなんて、ホントもったいない。
少しでもユーリを味わおうと僕は身を屈めて、彼の服の合わせ目へ手を滑り込ませた。
膨らみのない胸に、つんと立った感触。
「あっ!....っ、触んなっ」
「だって、僕だけ気持ちよくなるのは申し訳ないし」
「良いっての。大人しく感じてろよ」
言葉では拒否するものの大した抵抗もないのをいいことに、指先で快楽を与えていく。
「乳首、立ってる」
「言う...な.......っ」
「僕のを舐めながら、ユーリも感じてた?」
「ちがっ......んんっ!」
それを押しつぶすように刺激を与えてやれば、ユーリの身体が大きく跳ねた。
こうされるの、好きだよね。
「あっ、ん、......ふぅ」
切なげに眉尻を下げて、感じている様を隠せないでいる。
高く突き出した腰が無意識に揺らぎはじめていた。
今あの中に入って思いっきり突き上げてやったら、どれだけ気持ちいいのだろう。
もちろん、口でも十分気持ちいいんだけれど。
「......たい」
「え?」
「挿れたい......」
「フレン......」
「ユーリの中に、入りたい」
『だめ?』とは、聞かなかった。
ただ、正直な気持ちは伝えたかったから。
顔をあげたユーリは、少し困った顔をして、ふいと視線をそらした。
「......い...いぜ」
「え...」
「いいぜ。来いよ...」
「いいの?」
「――っ。お前が煽るから、オレもその気になっちまっただろが」
最後は吐き捨てるように言って、ユーリは手早くズボンを脱ぎ始めた。

ユーリの上着に手をかけると、さすがにユーリが慌てた声をあげた。
「な、上も脱がすのか?」
「なんで?」
「時間が.....」
「だって、せっかくだし」
「〜〜っ。だったら、お前も脱げっ!」
「うわっ」
乱暴な手つきで僕も脱がされて、あっという間にふたりとも裸になった。
久しぶりの素肌の感触を味わいながら、ベッドサイドの引き出しに僕がこっそりと仕込んで置いたローションを手にとった。
さすがに時間がないとはいえ、ユーリの身体に無駄な負担をかけるわけにもいかず。
なのに。
「いいからっ、早く来い...よ......」
「だけど、解さないと辛いのはユーリだよ?」
「だいじょぶ、濡らすくらいでいいから......」
ぐっと首の後ろから引き寄せられ、咬みつくようなキスをひとつ。
「早く、お前をくれよ...っ!」
「.....っ、ユーリ....!」
煽られるままにユーリの腰を掴んで、勢いのまま熱を突き立てた。
「はっ、ああぁ――っ!!!」
衝撃に、ユーリの背が大きくしなる。
滑りがあるとはいえ久しぶりの行為にユーリの中はキツくて、僕も思わず息をつめた。
「......く、おま...デカすぎ...」
「っあ、こんなにしたのはユーリだ....よっ」
「んんっ、まさか、こんな展開になるとは思わなかっ......あぁっ!」
苦しいのに、だけど余裕もなくて、荒々しく腰を動かしはじめる。
「ああっ!ふれっ...激しすぎ、んあっ」
「ユーリ、ユーリっ」
「あっ、やっ....ん、はぅっ」
奥へ奥へと突き上げれば、ユーリの身体がガクガクと震えはじめる。
いつにない性急な追い上げで、僕もユーリもただ快楽に支配されていた。
内に篭る爆発しそうな熱を、抑えられるだけの理性ももう残っていない。
「くっ、ユーリ....もぅ......っ」
「あ、あっ、ん...、オレ...もっ、.......あっ!」
頭の中で白が明滅して、限界が近いことを自覚しはじめる。
「ああっ!ふれ....フレンっ、やっ、あ!」
振り乱した綺麗な黒髪が、シーツの波へと流れていく。
仰け反った白い首元に咬みつきながら、ふたりで高みへと目指す。
「うっ、あぁ...も、イク......っ!ああぁぁっ!!」
「――っ、ユーリ.....っ!」
歓喜に震える身体を抱きしめて、一番奥で熱を放った。



まったりと余韻に浸ることもなく、僕もユーリも服を身につけ始めていた。
とりあえず手早く中を掻きだして、汚れた部分をさっと拭いてあげて。
ユーリは服を纏う手を動かしながらも、まだ瞳は若干潤んでいて、とろんとした表情でいる。
このままで外を出歩くなんて、どれだけフェロモンをまき散らしていくつもりなんだろう。
「ユーリ、まだ顔赤いよ」
「誰のせいだっての。思いっきり遅刻じゃねぇか」
「あはは、ごめん」
「......まぁ、流されちまったオレも悪いんだけどよ」
我ながら不本意だと小さく呟いて、ふいと顔をそらす。
お互いに久しぶりだったから、しょうがないと思うけど。
きちんと服を着たユーリは、よいしょと口にしながらゆっくりと立ち上がった。
「大丈夫?歩ける?」
「ん、へーき」
「何なら、待ち合わせ場所までおぶっていこうか?」
「やめれ。恥ずかしいから」
両手を差し出すと、顔に手が迫ってきて思いっきり押し留められた。
冗談だったのに。
「んじゃな、フレン。行ってくるわ」
「あ、待って」
そのまま扉を開いて出ていこうとしたユーリの腕を、とっさに掴んだ。
引き寄せて胸で受け止めて、まだ少し艶めいている口唇に僕の口唇を重ねた。
「ん、行ってらっしゃいのキス」
「......いちいち恥ずかしい奴だな、お前」
「気をつけてね」
「おう。じゃあな」
去り際にもう一度、今度はユーリから軽く口唇を重ねてきて、黒髪をなびかせながら彼は出ていった。
窓から外を見やれば、慌てて駆けていくユーリ。
その後ろ姿に微笑みを送って、僕は袖をまくった。
「さて。部屋の掃除でもしますか」



おしまい。




いつもそんな都合よく世の中出来ていない。
だけど、そんなすれ違いの多いふたりだからこそ、少しの時間だけでも大切にしたい。


っていうカンジでと思ったら、単にヤってるだけになってしまったという(笑)

ちなみにタイトルは某歌より。
フレンのステップが間違えてるって、アレね←



(2010.06.17)



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