カプワノールに向かうため、僕達の隊はエフミドの丘を越えようとしていた。 騎士巡礼の途中。もうすっかり通い慣れた道だったが、なぜだか今回は違う風を感じていた。 「よし。この辺で一度休憩をとろうか」 その声で隊列は足をとめ、それぞれへと散っていく。 積み荷の確認をする者、馬に水を与える者。 その様子をひととおり見回したあとで、僕はそこだけ開けた場所へと足を運んだ。 晴れ渡る空の下に広がるのは、広大なる海。 思いっきり息を吸うと、潮の薫りが胸に広がった。 初めてこの景色を見たときの、あの感動を思い出す。 この世界はまだまだ広いのだと、そして自分の存在はちっぽけなものなのだと、思い知らされた。 ハルルの街で、僕を追い掛けて来ている者がいると知った。 エステリーゼ様と、そして...。 この景色を目の当たりにしたとき、彼はどう感じるのだろう。 僕と同じ気持ちを抱いてくれるのだろうか。 いや、そうであることを願う。 「早く追い付いてこい、ユーリ」 そして、この広い世界で、自由に駆け回る君の姿を見せてほしい。 期待に膨らんだ胸を落ち着かせるため、もう一度大きく深呼吸をした。 「さあ、行こうか」 待つようなことはしない。 彼を、この世界へ導きだすために。 君は必ず、僕の隣に追い付いてくれると信じているから。 |
![]() |