夢と希望に満ちた世界へ。

カプワノールに向かうため、僕達の隊はエフミドの丘を越えようとしていた。
騎士巡礼の途中。もうすっかり通い慣れた道だったが、なぜだか今回は違う風を感じていた。

「よし。この辺で一度休憩をとろうか」
その声で隊列は足をとめ、それぞれへと散っていく。
積み荷の確認をする者、馬に水を与える者。
その様子をひととおり見回したあとで、僕はそこだけ開けた場所へと足を運んだ。


晴れ渡る空の下に広がるのは、広大なる海。
思いっきり息を吸うと、潮の薫りが胸に広がった。


初めてこの景色を見たときの、あの感動を思い出す。
この世界はまだまだ広いのだと、そして自分の存在はちっぽけなものなのだと、思い知らされた。

ハルルの街で、僕を追い掛けて来ている者がいると知った。
エステリーゼ様と、そして...。


この景色を目の当たりにしたとき、彼はどう感じるのだろう。
僕と同じ気持ちを抱いてくれるのだろうか。


いや、そうであることを願う。


「早く追い付いてこい、ユーリ」

そして、この広い世界で、自由に駆け回る君の姿を見せてほしい。


期待に膨らんだ胸を落ち着かせるため、もう一度大きく深呼吸をした。

「さあ、行こうか」


待つようなことはしない。
彼を、この世界へ導きだすために。



君は必ず、僕の隣に追い付いてくれると信じているから。







太陽の光を浴びて、キラキラ輝いていた海を眺めていたらなんとなく。



(2009.12.05)



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