水色の絆創膏。

人の気配を無くした校舎を、夕陽が橙に染めている。

生徒会の仕事を終え、僕はひとり廊下を歩いていた。
まだ明るいうちに帰れるだけ、今日は早い方だと思う。
とはいえ、今は期末試験の直前。
ほとんどの生徒は試験前で部活もなく、授業が終わればすぐに帰宅しているはずだ。
本当なら僕も勉強をしなければならない立場なのだが、試験が終わればすぐに終業式。
片付けられる仕事は早く片付けてしまいたいというのも本音で。


とりあえず、家に帰ったら勉強をしよう。


ひとつ溜め息をついて視線を上げたとき、昇降口に人の気配があるのに気がついた。


昇降口で待つ人。


幼馴染のユーリ。正直、学校では問題児扱いされている。
周りからは、『なぜ生徒会長ともあろう人が彼とつるんでいるのか?』とよく言われるが
腐れ縁なので仕方がない。
本当はそれ以上のカンケイであることは、もちろん内緒なのだが...。
彼は僕を見つけると、にこりと微笑みかけてきた。
「よっ、お疲れさん。生徒会長サマ」
ユーリは柱にもたれ、上着を肩に羽織り、こちらを向いて笑っている。
緩められたネクタイ。大きく開いた胸元。
普通なら『だらしない』と思うのに、『色っぽい』と感じてしまう心を悟られないように、中指で眼鏡を持ち上げた。
「ユーリ、なんでここに。試験勉強は?」
少し低めの声で咎めるように言うと、ちょっとムッとして顔をそらした。
「オレがべんきょーなんてするわけねぇだろ。かったりぃ」

その時、首元に視線が止まった。
綺麗な首筋にぺたりと貼られている、水色の絆創膏。
「ユーリ。それ、どうしたの?」
またケンカでもしたのかと思って、ヒヤリとする。
しかもこんなところを怪我するなんて、少しでも間違ったら大惨事だったのではないだろうか...。
「ああ、コレ?」
と、僕の心配を知ってか知らずか、ユーリは長い髪をかき上げて絆創膏を見せつけてきた。
「コレさぁ....、昨日お前がつけたキスマーク」
「はぁ!?」
思わず、大きな声をあげてしまった。
もしかして、それを隠すために貼っているというのか。
しかも、そんな目立つ色で....。
言葉を失ってしまった僕に、ユーリは妖しい笑みを向けてくる。
そして、その長い指が首筋をゆっくりと辿っていき。
「すんげえ濃いのつけるから、隠すの大変だったんだぜ?」
首を軽く傾げて、上目づかい。


頭の中で、理性の糸が切れるのが聞こえた。


「ユーリ、ちょっと」
腕を掴んで、靴を履き替え、外へと連れ出した。
「おい、なんだよ」
口では非難めいたことを言うくせに、なぜだか期待が織り交ぜられているように聞こえる。
人気のないグラウンドを、早足で横切る。
そして、グラウンドの隅にあるコンクリートの建物の重い扉を開けた。
「おわっ」
強引に腕を引いて中へ連れ込むと、ユーリは数歩よろめいて振り向いた。
その瞳には、好戦的な色を浮かべている。
閉めた扉が、バタンと大きな音を立てた。
ネクタイを緩めながら近づくと、ユーリは首に手を回してきながら僕の顔を覗きこんできた。
「...体育用具室に連れてくるなんて。フレンてば、や〜らし〜」
「まったくキミは。あんな格好で...」
「だって、こうでもしないと、フレンは試験前になると構ってくれねぇじゃんよ」
「....ふぅん」
妖艶な笑みを浮かべて誘ってくるユーリ。
だけど僕は、絡んでくる腕を解き、その身体を突き飛ばした。
「.....っ!!」
背後にあった跳び箱に叩きつけられたユーリに、そのまま覆いかぶさる。
身体よりひとまわり小さい跳び箱に背を預けると、自然と仰け反るような体勢になっている。
すらりと伸びる首筋。
そして、そこに映える水色の絆創膏。
ゆっくりと指を滑らせると、ぴくりと身体が跳ねた。
「...フレン.....」
「こんなに目立つ色の絆創膏をつけて。...僕を誘ってるの?」
こちらを見上げる紫の瞳が揺れている。
それは不安からなのか、欲情からなのか。
僕は、にっこりとユーリに微笑みかけて、勢いよくその絆創膏を剥がした。
「ぃつっ!」
白い肌に浮かび上がる、赤い絆創膏の跡。
「だったら、跡が消えないように、もっとキツく付けてあげるよ」
「ふれ...、はあぁん!」
口唇を押し当てると、ユーリは熱い吐息を漏らした。


「...っく....、はぁっ.....」
肌蹴た胸元を指で弄って、舌を這わせていく。
その彩を軽く吸い上げれば、ぷっくりと赤く色づいて。
下着も付けずにシャツを羽織っているだけなんて、実は透けて見えているんじゃないかと
いらぬ妄想が頭をよぎる。
ぴんと立つそれを舌でつついて歯を立てると、色っぽい声で鳴いた。
「あぁっ!.....っ...、いてぇ.....」
「嘘。ユーリは、ちょっと痛いくらいのほうが良いんでしょ?」
「ん...なわけ、な......ああっ」
ズボンの上から下半身に触れる。
「だって、身体はすごく悦んでるみたいだし」
「...あっ、はぁ.....っ......」
その白い肌にはもう、無数の朱の痕が散りばめられている。
それでもまだ足りなくて、脇腹の辺りに口唇を寄せると、感じているのか身体をよじる。
「....ぅあ、も.....いいかげんに....」
こちらを見上げてくる瞳は、すっかり欲で潤んでいた。
「ちゃんと、さわ...れよ...、ばかぁ.....!」
ただそこに触れていただけの手に、自ら腰を押しつけてくる。
「何?ちゃんと触っているじゃないか」
そう言って、すっかり熟れている乳首を指で弄る。
「ちが...っ、そこじゃなくて....あぁ.....」
いやいやと首を横に振るたびに、美しい黒髪が白い首元へとからみつく。
そんなユーリをまだ見ていたいと思うと、もっと虐めたくなってしまう。
「...っ、てめ.....、くそっ」
とうとう我慢できなくなったユーリが、僕の襟もとをぐっと掴んで強引に引き寄せた。
「...っ!」
口唇が押し当てられた首筋に、ちくりと痛みを感じた。
きっと付いたであろう、キスマーク。
「....へへっ。お返しだ」
いたずらが成功した子供のように、ぺろりと舌を出して笑う。
「...................」
まだ、随分と余裕じゃないか。
僕はユーリの腕を掴み上げ、その身体をひっくり返してうつ伏せに組み敷いた。


「はぁっ、ああぁっ!!」
狭い室内に、ユーリの喘ぎ声が響く。
後ろから突き上げながら見下ろせば、ユーリは跳び箱にしがみついて快楽を貪っている。
「あっ、うあ..、お...おくに、あたる...っ」
お互いの荒い息づかいと、ぐちゅぐちゅという卑猥な音。
身体を屈めて、乱れたシャツから覗く肩を食めば、一層高い声をあげた。
「ああっ、あん、も....、イキそ...っ」
うわ言のような声を聞けば、下半身に痺れが走る。
もう限界が近いことを悟って、さらに激しく責め立てた。
「やっ!あっ、ふれ...はげしっ、ああああああっ!!」
痙攣する内壁の波に襲われるままに、彼の中に欲を放った。

ずるりと彼の中から抜き出すと、その秘部からとろりと白濁色の液体がこぼれおちる。
それがすべすべの内腿を伝っていく様も、とても綺麗だ。
「ユーリ...」
まだ余韻に浸っている彼の頬へ、口づけをひとつ落とす。
すると、それに応えるように頬をすりよせてきた。
「...体育用具室って、意外に燃えるのな」
クセになっちまいそうと、彼が笑う。
「勘弁してくれ...」
これがクセになってしまったら、正直こちらの身が持たない。
やれやれと思いながら、後処理をするために、今まで自分を受け入れていた場所へと手を伸ばした。
敏感になっているのか、指を中へ滑り込ませると、びくりと身体が跳ねる。
「はぁっ!....んんぅ....」
「ユーリ、そんな声出さないで」
また、煽られてしまう。
困った顔をした僕を、ユーリはあの表情で見上げてきた。
「...いいじゃん。もっかい、しようぜ?」
手を伸ばし、シャツを掴んで引き寄せた。
そして誘うように、熱くキスをせがまれる。
「.....まったく君は....」
まるで麻薬のような、小悪魔の誘い。

それでも吸い寄せられるまま、僕は熱いキスに流されることにした。





「でも帰ったら、みっちり勉強してもらうからね」
「...うっ......」



「All range」の雪野真詞さまに、超素敵なイラストをいただいてしまいました〜vv
雪野さんの麗しいユーリのイラストを見ていたら
悶々と妄想が爆発してしまって
ほぼ押しつけ状態で、このSSを献上させていただきました。
雪野さん、本当にありがとうございました!

こんな華麗なユーリとのコラボ、夢みたい...vv


(2009.12.04)




もどる