あなたにサラダ。

バックミュージックは鳥のさえずりと、子供たちの笑い声。
窓からはさわやかな風が入ってきて、ふわりとカーテンを揺らす。

「ん、よし」
小皿から離れた唇が、微笑みの形へと変わる。
味噌汁の味が一発で決まると、とても気分が良い。

部屋の中に、良い匂いが漂っていた。
テーブルの上には綺麗に盛りつけられたサラダ。
そして、ふかふかのたまごやき。
焼き魚もできているし、ごはんもばっちり炊きあがっている。

とても、気持ちのいい朝だった。
早くに目が覚めてしまったので、洗濯をして、朝食を作ってみた。
我ながら、カンペキな朝メシだと思う。


もちろん、愛情たっぷりの。


振りかえりベッドを見ると、そこには天下の騎士団長サマの姿があった。
まだ、ぐっすりと眠っている。

ユーリは苦笑いを浮かべて、彼の眠る隣へと、そっと腰を下ろした。

ひとつにまとめた黒髪のポニーテールを揺らして、彼の寝顔を覗きこむ。
とても無防備な寝顔。
こんな表情を見られるのは、世界広しといえども、きっと自分だけだろう。
朝の光でキラキラ光る金髪を、ふわりと撫でてみた。

いつもなら、少しの物音でも目を覚ますはずなのに、今日はまだ起きる気配もない。
日ごろの激務で、相当疲れているのだろうか。

指を滑らせて、彼の頬へと触れた
なんだか、前に比べて少し痩せたような気がする。
普段は周りに、もちろんユーリにも、疲れている素振りを見せないフレン。
傍から見ると、働きすぎだろうというくらい、いつも忙しそうに動き回っていて、
よく副官であるソディアから休むようにと言われているらしいが、本人は一向に休もうとしない。

それでも自分の前でだけは、甘えてくれれば良いと願う。
今の、この時のように。

(...何でも、ひとりで抱えこんでんじゃねーぞ?)
ユーリは腰を少し浮かし、彼の顔を覗きこんだ。

そして、軽く啄ばむような、キス。


もう少し寝かしといてやろうと思い、ベッドから立ち上がろうとした。
すると、突然腕を掴まれて、強引に引っ張られた。
「うおっ!!」
背中に柔らかい衝撃を受け、驚いて瞳をあけると、目の前に迫る彼の顔。
「おはよう、ユーリ」
気付けばユーリは、フレンに覆いかぶさられる形でベッドに仰向けになっていた。
「お...お前!起きて.....」
「だって、ユーリが可愛らしい悪戯してくるんだもの。起きるの、勿体ないじゃないか」
「か、可愛いってなぁっ....!!」
急速に顔に熱が集まってくるのが、自分でも分かる。
いったい、いつから起きていたんだろう。

何か恥ずかしいコトを口走ってはいないだろうか。
いや、キスだけで十分恥ずかしいだろうが。
何やってたんだオレ!!
いっそ、記憶が飛ぶぐらい殴っておこうか...。

ぐるぐる色んなことを考えていると、服の裾からあたたかい手が侵入しようとしてきていた。
「ちょっ、何やってんだ!」
慌てて阻止しようと手を伸ばしたが、そっちに気を取られている間に口づけを迫られる。
「ふ...、んんっ....!」
熱い舌で口内をまさぐられれば、甘い痺れが身体を駆け抜けて。
もう、手に力も入らなくなる。
熱く迫られれば、身体も意識も溶けてしまいそうに、気持ちいい。
すり抜けてきた手のひらが弱いところに触れれば、自分の身体にも熱がこもる。
いつの間にか、すっかり息も上がってしまい。
「ふ、フレン。朝メシ...、冷めちまう....」
それでも、息継ぎの合間に最後の抵抗を。
するとフレンはキスを止めて、ユーリの瞳をじっと覗きこんできた。
「朝ごはんも良いけど、それより先に僕は、ユーリを食べたいな」
その顔で極上の微笑みを向けられては、もう抵抗する気もなくなってしまう。
ユーリは観念して、軽くため息を漏らした。
「...ったく。しょーがねぇなぁ」

本当は、結局こうやってすぐに許してしまう自分が、一番しょうがないと思うのだが...。

ちらりと瞳を開けると、嬉しそうに笑う彼の顔。


もうこれ以上考え事はやめて、もう一度、甘いキスの味に酔うことにした。






「あ!なぁフレン」
「え、何?」
「窓が開いてる。閉めてこい」
「..............」




2000Hitキリリクいただきました!(お名前を頂戴できなかったのですが...!)
リクエストは「もう甘々…それはもう甘々なフレユリ」でしたが、いかがでしょうか?
どちらかというと、ユーリさんのほうが甘いカンジになりましたv

リクエストありがとうございました!


(2009.11.28)



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