下っ端の憂鬱。(2)

はっと我に返ると、ユーリがにやにやして顔を覗きこんできた。
「ん〜?お前、何想像してんだ?」
「なっ!」
フレンは襟を掴んでいた手を放し、ユーリから距離をとった。
その慌てようを見ても、何を考えていたのか想像がつく。
「どうせ、やらしいコトでも考えてんだろ」
「ちがっ、僕は.....!」
図星をつかれて、慌てふためく。
ユーリはにやりと口元を上げ、フレンに顔を近づけた。
「なぁ、このまま、しちまわね?」
耳元で、甘くささやく。
「す.....するって、何を........」
「そんな野暮なこと、言わせるなよ」
ユーリの手がフレンの服にかかり、ゆっくりと胸元を開いていく。
「なぁ、ローションプレイって、いいらしいぜ?」
まるで悪戯を思いついた子供のように、くすくす笑いながら。
「.....いったい、どこでそういうの覚えてくるんだい?」
「さぁー、どこだったかなぁー」

フレンの上着を剥ぎ取って、床の粘液を掬い取り、フレンの胸に手を這わせた。
マッサージするように、大きく手で円を描きながら塗りつけていく。
そして、胸にある小さな突起を手で弾くと
「んっ.....!」
フレンから小さく甘い声がもれた。
「どうだ?......感じる?」
液体の滑りを借りて、指の動きもいつも以上になめらかになる。
たまに爪で引っ掻かれるたびに、どうしようもない快感が躯に走る。
いつもと違う感覚に、もうどうにかなってしまいそうで。
「はっ.....、ユーリ.....」
いつの間にか、フレンは床に倒されていて、ユーリが馬乗りになっている状態になっていた。
ユーリのなだれ落ちる髪を耳にかけてやり、フレンもまた同じように相手の胸へ手を伸ばす。
「ぁっ.....、すっげ、想像以上.............」
紫の瞳が、うっとりと揺れる。
お互いにたっぷりと塗りたくり、ユーリはゆっくりと躯を倒した。
「すっげぇ、ぬるぬる〜」
フレンの鍛えられた胸板の上に、躯を滑らせる。
面白がって遊んでいると、熱いものが触れた。
「ふふっ、ユーリの、熱くなってる」
「.....お前のもな」
お互いのものをこすり合わせながら、じゃれあうようにキスをする。
フレンの手が、ユーリの背中を腰を、やさしくなでる。
「っは、....きもちい.....」
夢中で腰を押しつけ、感じたことのない快楽にひとしきり酔う。
ぴちゃぴちゃと響く水音は、合わさる口唇からなのか、それとも...。
「あっ.....!」
瞬間、ユーリの動きが止まった。
高い位置から垂らされた液体は
ゆっくりと意思を持って、割れ目を伝い流れる。
思わずその感覚を追ってしまい、焦らされるような思いに躯を震わせた。
「..あ....っ、いや..........」
躯の中の熱をあおられ、触ってほしくてたまらなくなる。
触れ合っているソコとは、違う。
「ん....フレン、もぅ......」
いやいやと首を横に振り、濡れたまなざしをよこす。
その目元は、ほんのり色付いていた。
「....どうしてほしいの、ユーリ?」
だが、焦がれる手は、いやらしくユーリの尻をなでまわるばかりで。
「んんっ....、さわ..って、ほし........」
「ん?触っているじゃないか」
「そこじゃ....なくて....っ」
「じゃあ、ここ?」
「ああっ!」
ねっとりと撫で上げるように、指が割れ目を這う。
欲しい場所を一瞬かすめられただけで、熱が躯中を走り抜ける。
フレンは口元に笑みを浮かべ、小さく震えるユーリの髪をかきあげてやった。
頬に手をあて、顔をこちらに向ける。
「もしかして、ここのことかな」
「やっ!そこ......っ」
入り口を、触れるか触れないかの位置で触れられては
周りをくるりと指が這う。
なかなか満たされない期待に焦れる思いと
その顔を見られているという羞恥で、頭の中がごじゃごじゃになる。
あふれだしそうな気持ちに耐えるよう、下唇をかむ。
それでも、まだ、足りない....!
「ふれんっ!!」
たまらず名を口にした瞬間、くぷりと音をたてて指が侵入してきた。
「はぅっ!ああああっっ!!」
粘液の滑りを借りて、一気に深くまで入り込んできた。
いつもは感じる痛みはまったくなく、ただ快楽だけが襲ってくる。
「すごい。ユーリの中、もうとろとろだ....」
「あぁっ!ぅあ.....!」
すぐに2本に増やされて。中をかきまわされて。
良いところに触れれば、弓のように躯がのけぞる。
「あっ、んぅっ!.....ん...!」
前も、粘液と先走りの自分の液でとろとろになっていて。
快楽に酔いしれるそれを、そっと手で握りこんだ。
「やっ!ばか触るなっ.....ああああ!!」
前からと後ろからの攻めに、ただ声をあげるしかなく。
「ふれんっ、や...っ!も.......でるから.........!」
抗議をしようと腕をつかむが、力がはいらず、また滑ってうまくいかない。
そのまま煽られて、視界が白へと染まっていく。
「あっ!も、むり....っ!あああああ!!」
悲鳴に似た声とともに、白い熱を吐き出す。
その瞬間に、今まで指で攻めていた部分に、フレンは自身を挿入した。
「はああああああっっ!!!」
快楽の絶頂の瞬間にさらに快楽が襲いかかり、躯が大きく揺れた。
「あ.......っ、あ.........」
強すぎる刺激に、意識がついていかず。
大きく見開いた瞳には、何かを見る余裕すらなく。
フレンは、腹筋に力を入れ身体を起こすと
がくがくと揺れるユーリの身体をやわらかく抱いて、そっと寝かせる。
そして、大きくユーリを突き上げた。
「はあぅっ!!くあぁぁぁ!!」
襲い来る快楽の波に、ただ声をあげるしかできず。
手が、何か掴むものを求めるが、床がぬるぬると滑るばかりで
たまらずに、自分の髪を握りしめる。
「やっ!はげし....っ....ああっ!!」
余裕のない腰の動きに翻弄される。
相手の息遣いも、徐々にせわしなくなってきて。
こらえきれなかった快楽が、涙となってぽろぽろ零れおちた。
「ユーリっ、すごい....こんな....っ」
「だめっ、ふれ......、またイッちゃ.....!ああああああ!!!」



(..........あれ?)
目を覚ますと、見慣れない景色に違和感を感じた。
その部屋は、うっすらと明るくなっていて、もう朝だということを理解させる。
(......ああ、そうか)
ぼんやりとした頭でゆっくりと記憶をたどる。
あれから、ふたりで散々盛りあがったあと
なんとかシャワーをあびて
被害のほとんどない二階へとあがってきたのだ。
強烈な睡魔に襲われて、途切れとぎれの記憶しかない。
他人のベッドなのに...と気遣う余裕もなく。
ユーリは、身体を引きずるように寝返りをうつと
視界に、至近距離のフレンの顔が飛び込んできた。
「おわっ!」
「おはよう、ユーリ」
朝日に照らされて透けるような金髪に、とろけるような笑顔でにっこりと微笑む。
「な....なんだよ」
「いや、相変わらず、気持ちよさそうに眠る顔だなーと思って」
「で、ずーっとヒトの寝顔見てたのかよ。趣味悪ィ」
「そうかな?」
フレンは首をかしげると、よっと声をかけて身体を起こした。
「さ、ユーリ。昨日の続きをがんばろう。
 夜までには掃除を終わらせないとね」
「げっ」
瞬間、昨日の惨事が脳裏をよぎる。
よく考えれば、まだほとんど手をつけていないに等しい状態だった。
袖をまくり、やる気満々の背中を見て、嫌な汗を感じた。
............................................。
「いたっ!いたたたたたた!!!!」
「ユーリ!?」
声に驚いて振り向くと、ベッドの上で悶えるユーリ。
「腰がいてぇ!ケツがいてぇ!!これはもう立てねぇわ!
 昨日誰かさんが激しかったおかげでー」
「!?」
明らかにユーリの口調は棒読みで。
「というわけで、今日は俺は休んどくわ。
 じゃっ、あとよろしく」
すちゃっと手をあげて、ごろりとベッドに寝転ぶ。
「ちょっ、ユーリ!?」
シーツを頭まで被って、手だけを出してひらひらと振っている。
(....まさか、これは.......)
ハメられた....!?
フレンの肩が、わなわなと震えはじめる。
もしかしてユーリは、初めからそのつもりだったのでは....。

そしてフレンは、カッと目を見開いた。



映画のフレユリは、青くていいねぇ=。
どうやらウチのユーリさんは、襲い受っぽいな〜と思っていたら
だんだんフレンに鬼畜が入ってきそうになった...(どうよ)
「ろーしょんぷれい」という単語だけで、ここまで話が膨らむなんて。
妄想バンザイ!




(2009.10.29)



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